AWS Summit Tokyo 2013(Day 1)に参加したレポートなど
初日、行ってきた。
セッションは、エンタープライズトラック、コンシューマートラックを中心に選択しました。
テクノロジーの内容は、普段からAWSのサポート、SAのみなさんに伺える機会があるが、他のユーザさんの生の声は、こういう機会でないとなかなか聞けないため。
参加セッションは以下の通り。
AWSへの要望
セッションの中で挙がった、各社さんからの「AWSへの要望」。
これらの要望は、他のAWS利用ユーザさんも抱えられている、共通の課題を含むはずです。
SI屋として、お客さんと一緒になって考えていかないといけない。
■アンデルセンサービス 堀尾さん
- メールの機能がほしい。(※おそらく、Amazon SESでは要件を満たせない、ということだと思われる)
- ジョブ管理、ファイル連携機能がほしい。
- コントロールパネルが、エンドユーザにとって難しい。日本語化してほしい。
- コントロールパネルで操作できる機能が多すぎる。基本的なサービスだけでよい。
■日本経済新聞社 東さん
- ELBはだいぶハマった。ELBでは実現できない要件があった。ELBの機能とパフォーマンスを向上させてほしい。
- DynamoDBのパフォーマンスを向上させてほしい。
- 利用料をもっと安くしてほしい。
- 円で支払いさせてほしい。非常に切実な要望。プロジェクト開始前にコスト試算した時は、1ドル80円。円安が進み、かなり変わった。為替リスクがある。
■インテージ (お名前を失念)
- ドル高にショックを受けた。見積もりがはずれたため、為替リスクをヘッジできる仕組みがあれば。
■東急ハンズ、ハンズラボ 長谷川さん
- どんどん世界展開してほしい。もっといろんなリージョンを作ってください。
- EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)。いつも安くして下さい。競合よりも、圧倒的に安くしてください。他のクラウドサービスと比較検討しなくていいぐらいに。「一番安いんだから、AWSでいいじゃないか」と言えるように。
- より簡単に使えるように。例えば、松竹梅の中から選択すると、冗長化や負荷分散がいい感じに設定される、的な。
クラウドファースト企業が実践するAWS活用の実際
パネルは、日経BP中田さんモデレータで、アンデルセン堀江さん、ケンコーコム新井さん、東急ハンズ長谷川さんがパネリスト。
実際にAWSを活用されているユーザさんの生の声が聞けたため、大変おもしろかったです。
(長谷川さんの漫談も・・)
以下、メモします。抜けていたり、表現が変わっていたりするかもしれませんがご容赦下さい。
AWSのよかった点、悪かった点
新井さん
よかった点。PoCがめちゃめちゃ簡単。怖いので大きめのインスタンスを選択、安定稼働したら下げる。オンプレミスではできない。いらなくなっても、H/Wだと返せない。
悪かったというか、想定と違ったところ。AWSは新サービスのリリースが頻繁すぎて、社内の人材の習得が追いつかない。
長谷川さん
よかった点。柔軟性。データセンタ―レベルの冗長化が簡単。データや、サーバイメージのコピーが簡単。
また、クラウドベンダーのイメージと違い、AWSはサポートが「普通に」対応してくれる。質問したらちゃんと答えが返ってくる。SAの方からも、大変積極的に情報提供してくれるところも評価できる。
悪かった点。POSシステムを導入したところ、VPC内ではマルチキャストができず、POSの時間起動ができなかった。
堀江さん
よかった点。コストの桁が違う。夜のバッチ処理のタイミングのみ起動するため、利用料金を抑えることができる。EDIの仕組みをAWS上で実現した際、回線を用意する必要がなかった。EDIの監視は必須なので、サイトロック社やノーチラス・テクノロジーズ社の力を借りている。今のところ、業務が停止するような障害は起きていない。障害起きても、バッチ処理を冒頭からリランすればよい。バッチ処理時間が大幅に短縮できたため、リランしてもバッチウィンドウに収まる。
クラウドは難しい?
中田さん
国内ベンダーからこういう話を聞いた。AWSのようなセルフサービス型のサービス、ユーザは使いこなせないよ。だから、AWS、ユーザー企業が使うの難しいよ、と。
クラウドのサービスはアメリカ生まれ。アメリカは、元々ユーザ企業の中で内製が普及している。だから、セルフサービス型のサービスを使いこなす下地があった。
IPAの資料によると、日本のITエンジニアの多くはベンダーで働いており、逆にアメリカはユーザー企業で働いている。
日米で環境の差があるため、クラウドは日本に合わないということか?どう思うか?
長谷川さん
そんなことはない。企業の方針次第。ハンズは、自分達でシステムを作っていく方針。ただし、自分たちだけの能力、リソースには限界があるので、プロの力を借りる。
新井さん
ケンコーコムは、自前で人的リソースは抱えない方針。必要な時に、タイムシェアリングで必要なプロの力を借りる。プロにはノウハウがある。
堀尾さん
始めにVPCを導入した。これを自分達でやるのは大変。よって、先ずは専門家にベースを作ってもらう。そして、それを社内で横展開する。インフラとネットワークについては、できる限り楽をしたい。気にかけない。アプリやパフォーマンスに注力したい。よって、最初は専門家の力が必要。
情シス、ITベンダーに期待すること
堀尾さん
情シス部員について。5年後はクラウドが常識になっている。既存のホスティングのものをどうするか、今から考えておかないといけない。AWSの機能はどんどん増えていくため、自社でどう活用するか考えないといけない。
例えば、実績DBが管理会計処理も兼ねており、リソースを食いあっている。どうするか。検索だけRedShiftに移行する等、考えないといけない。AWS以外のサービスも比較して、見定める。方針を決めて、情シス部員には5年後を見据えて、準備させたい。
ITベンダーについて。ITベンダーにも得手不得手がある。システムによってはオンプレでもよい。ベンダーロックインは怖いため、OSSに寄せて、業務は担保した上で、軟着陸していきたい。SIerとどう付き合うか、商流を考える、販社として取り込む等の策を考えないといけない。
新井さん
クラウド移行のスピードは、企業カルチャーの変革のスピードと一致する。カルチャーを変えないと、変革スピードは上がらない。
情シス部員について。社内に専門家を抱えることは難しい。技術が使いものになるか、社内の課題解決の手立てになるか、目利き、「匂いで探る」的な感覚を持てる人を育てたい。本を読むだけでは身につかない。クラウドは試すのが簡単なので、トライアンドエラーがやりやすい。手を動かさないと。おもしろいものが好き、あれやこれや試すのが好き。そういった素養は、技術者の本質だと思う。
長谷川さん
情シス部員について。Versatilistを目指してほしい。あれもこれもできる。自分はエンプラ系で、若い頃ホストは触れなかった。今は、簡単に試せる。ネット系の人材は、自分でビジネスを考えて、開発して、運用している。一方、エンプラの人材は保守的。そこで、部員には「できる、絶対できる!」と言い続けている。ハンズラボは、店舗にいた人間がシステムを作っている。業務がわかっている。やればできる。エンタープライス系だってできる。
ITベンダー。がんばってほしい。
中田さん
逆のことを言われているのに、共通点がある。
東急ハンズさん。店舗の経験者がアプリを開発。情シス部員25、6人の内、システムの運用は3人。残りは開発者。
アンデルセンさん。10年前は情シス部員30人、今は5人。元々いた部員は、ユーザ部門に異動。元情シス部員が、ユーザ部門でアプリ開発を主導。開発も運用も、なるべくベンダーを活用している。
逆のように見えるが、共通点は、「業務を知っている人が、アプリを作る」という点。大変おもしろい。
従量課金はうれしくない?
中田さん
ベンダーからこういう話を聞いた。予算達成できなかったら、翌年の予算を減らされる。だから、ユーザは従量課金を喜ばない。本当か?
堀江さん
これは私の自論。売り上げの1%は、必要経費である。1%切ったら、システム品質は保証できない。そう社内に言い続けている。インフラ費用が下がっても、下がった分、開発に回したい。安定したシステムを提供することが重要で、従量課金とか関係ない。
長谷川さん
確かに企業に予算管理は必要。ただし、AWSの費用は、企業全体のコストの中の微々たるもの。会社全体の予算の中で、調整したい。そこが情シス部長の腕の見せ所。