バカは賢くなれるのか? ― 「戦略がすべて」
帯にやられた感がある。
本書、「戦略がすべて (新潮新書)」は、
「バカは市場で勝ち残れない。」
という、私のような
「今のままで、果たして数年後、自分は市場で生き残っていけるのか」と
漠然とした不安を感じている中堅サラリーマンや、
意識の高い若手ビジネスパーソンをターゲットにした新書ですね。
概要
本書は、著者の瀧本哲史さんが日経プレミアムPLUS等の雑誌で
連載として寄稿されていたエッセイを、
「戦略」というテーマで再編集した新書です。
時事問題を瀧本さんの視点で分析した上で、
問題点(イシュー)をあぶり出し、
そして瀧本さんなりの戦略(案)を提示する、という構成になっています。
時事問題の中には、極端な言説でブログを「炎上」させてオーディエンスを集め、
言説に「ついてこれる」読者を信者的に囲ってしまい、
集金を仕組み化するネット上の炎上ビジネスに言及した章もあります。
完全に、イケダハヤト氏のことですねわかります。
さて、前置きが長くなりましたが、
書店で心の琴線に響いた「バカは市場で勝ち残れない」について、
読みながら「じゃあどうすればバカじゃなくなれる(賢くなれる)のか」と考えました。
本書の中では、
「バカでない」状態とは具体的にどのような状態なのか、
明確に述べられてはいません。
(当然です。バカをテーマにした本ではないからです。)
推測ですが、書名である「戦略がすべて」が表すように、
所謂「戦略思考」を駆使し、先ずはイシューを明確にし、
イシューを解決するためのステップを網羅的な観点から分析・洗い出しを行い、
そして着実に行動を起こしていける人材。
これを「バカでない」人材と仮定します。
上記のような人材になるのは、はっきりいって難しいです。
コンビニに行くと、「戦略思考」「ロジカルシンキング」といった
薄い図解本がよく売られていますが、
あんなものを読んだだけで戦略思考ができるようになるとは到底思えませんし、
一方で、分厚いビジネス書を読んだところで同じ結果に終わるでしょう。
トヨタでは、1枚の紙に、相手に伝えるべきポイントを
簡潔明瞭に纏める訓練を、日々の仕事の中で積む、という話を聞いたことがあります。
また、戦略コンサルティングファームでは、若手のアソシエイトやアナリストが
日々チャートを作成し、それを先輩社員に厳しくレビューされながら(詰められながら)
身に着けていく、と理解しています。
戦略思考のようなビジネススキルは、基本的に業務の中でそれが普通に使われている
環境に身を置かなければ、身に着かない、というのが私の持論です。
それでは、俺はいつまでもバカで生き残っていけないのか・・
絶望的な気分に陥りますが、その解決のヒントは
「6. コンピューターにできる仕事はやめる-編集者の方程式」
にあります。
本章では、コンテンツビジネスにおけるネットメディアの台頭を例に、
今後は「コンピュータにできる仕事しかできない人間は淘汰される」と喝破します。
これは、ダニエル・ピンクが「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」で言ったことでもあります。
瀧本さんは、「コンピュータにできる仕事しかできない人間は淘汰される」と述べると共に、
これからは
「人の知恵とコンピューターの計算を融合させたハイブリッドモデルが勝利する」
と述べています。
これは、普段からIT、特にクラウド関連のビジネスに携わりながら、
私が感じていることでもあります。
「組み合わせ」が、重要なのです。
つまり、「どうすれば賢くなれるのか」という、私の問い自体が間違っていたのです。
まとめ
これからの時代に生き残っていくためには、
異なるものと異なるものを組み合わせること、
例えば、
ITとリアルのモノを組み合わせること、
人と人を組み合わせること、
異なる業種と業種を組み合わせること、
等、組み合わせと工夫が重要である。
これが、本書を通じて今回学んだことです。
戦略思考のケースブックとしても活用できる本書、興味のある方はぜひお試しください。