Category: Books

アイデアを寝かせるとはどういうことか

  『思考の整理学』を読み返す。 剣術で言うなら、『考える技術・書く技術』は刀の振り方を中心にしているのに対し、『思考の整理学』はどちらかと言うと実戦に向けての心構えとか、「戦うということ」について述べたエッセイという印象。教えて君から脱却し、いかに自分で課題を設定し、答えを導くことができるようになるかを、エッセイを通じて学ぶことができる。 結局、自分の頭で考えられるようになるには、以下のようにたくさん本を読み、たくさん書き、工夫・推敲することが秘訣のようだ。 三多とは、看多(多くの本を読むこと)、做多(多く文を作ること)、商量多(多く工夫し、推敲すること)で、文章上達の秘訣三ヶ条である。 これを思考の整理の方法として見ると、別種の意味が生ずる。つまり、まず、本を読んで、情報を集める。それだけでは力にならないから、書いてみる。たくさん書いてみる。そして、こんどは、それに吟味、批判を加える。こうすることによって、知識、思考は純化されるというのである。文章が上達するだけではなく、一般に考えをまとめるプロセスと考えてみてもおもしろい。 思考整理のコツも色々と提示されているのだが、先ず「一事にのめり込みすぎてはだめ」ということ。一旦考え、そしてそれを「寝かせる」。これは脳関係の本でも読んだことがある気がするのだが、自分は意識してくても、脳は寝ている間にその日にあったことを処理しているらしい。知らず知らずの内に考えが熟成され、ある日ふと良い考えが浮かんだりすることがあるらしい。でも、そのためには寝かせる対象の考え事を色々とストックしなければならない。 また、「つんどく法」という読書術も紹介されている。「積読」は普通、本を買って積み上げておくだけで満足してしまうことを指すと思うんだけど、本書の「つんどく法」は参考文献を可能な限り集め(積み上げ)、集まったところで一気に読みきるというもの。効用として、同じテーマの本を一気に読むと、定説となっている部分、諸説入り乱れている部分がよくわかる点が挙げられていた。確かに、一冊読んだだけだと頭になかなか定着しないので、何か深堀して調べたいことがあったら「一気に」読むというのは有効かもと思った。 その他、色々と示唆が多く、繰り返し読みたくなる内容。1986年に出版された本らしいのだが、コンピュータが普及するにつれて、人はコンピュータにできない付加価値の高い生産をしなければならないと喝破する点など、少しも古く感じられず。 書店でよくみる「もっと若い時に読んでいれば・・・」という一般読者の方の推薦文は、伊達でない。

採用基準 - 地頭より論理的思考力より大切なもの

  某氏のおちゃらけていない、採用基準を読んだときのメモ。 マッキンゼーが求める人材の3条件は、 1、リーダーシップ 2、地頭のよさ、もしくは個別分野における知識や経験 3、英語力 である。 その中で最も重視される条件が、「リーダーシップ」である。 リーダーシップとは? リーダーの仕事は、「なんとしても成果を出すこと」である。 リーダーシップは、役職に関わらず、組織、グループの全員に求められるものである。 リーダーは、役職上の社長、部長、課長だけを指すものではない。 役職はメンバーであったとしても、組織の成功に向け、価値のある成果を出すこともまた、リーダーシップである。 リーダーがなすべきこととは? 1、リーダーは、目標を掲げる。 目標は、ただの目標ではなく、高い目標を設定する。 そして、変化を自ら起こすことが求められる。 2、リーダーは、先頭を走る。 一番最初に始める、アクションを起こすことは、難しいし大変である。 そんな中、先頭に立って目標や、問題や課題に切り込んでいくのがリーダーである。 これは、役職上の「チームリーダー」である必要はない。スタッフであっても、先頭を走ってよいし、走るべきである。 3、決める 世の中の問題や課題は、答えのないケースがほとんどである。 その中でも、自分なりの仮説やロジックを持ち、意思決定することがリーダーシップに求められる素養である。 意思決定には、説明責任が求められる。そして、結果責任も問われる。 その大変さも含めて自分事として引き受けられるのが、リーダーシップである。 4、伝える リーダーは、仲間を巻き込む必要がある。 バックグラウンドも考え方も違う仲間を巻き込むためには、目標や自分の考えを明確に伝え、説得する力が必要になる。 リーダーシップを学ぶためには? 1、バリューを出す 先ず、普段から、「自分は単価以上、給料以上の仕事をしているか?」、常に意識しましょう。 自分の仕事が、お客さんや、会社のために役に立っているか、常に考えましょう。 2、ポジションをとる 「ポジションをとる」とは、「自分はこう思う」と、常に考え、発信することである。 お前はどう思うんだ?と、常に自分に問い続けること。 そして、自分に問うているだけではだめで、それを周囲に伝えること。 3、自分の仕事のリーダーは自分 たとえ上司から振られた仕事であっても、「この仕事のオーナーは自分である」と考え、取り組むこと。 上司の依頼で提案書を作成するなら、自分がその提案書で顧客にプレゼンをし、説得し、仕事を取ってくることを意識して取り組むこと。 この積み重ねが、自身のリーダーシップを鍛えることになる。 4、ホワイトボードの前に立つ これは、議論の構造をホワイトボードに示す、という単純な話ではない。 会社の重役や上司、先輩が列席する会議に出席したとする。 業務時間中に仕事として会議に出席するのであれば、例え若手であったとしても、会議の目標達成のため、価値を出すべきである。       上記は、本書を読んだ上で、自分なりに解釈した内容も含まれるので注意。 私は、特にマッキンゼー礼賛などという感想は持たなかった。 海外からより安価な労働力を容易に調達できる現代において、相対的に人件費の割高な日本人が、労働市場で生き残っていく上で本質的に重要な内容が書かれていると思う。 ただし、日本でリーダーシップを身につけるには、リーダーシップを発揮する人材の多い組織で働くか、自分で会社を興すなどして、否が応でもリーダーシップを発揮しなければ立ち行かない環境に身を置くかしなければ、なかなか難しいだろうなとは思った。 非常に費用対効果の高い本である。Kindle版はよ。 [amazon_enhanced asin=”4478023417″.

未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II

  未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義IIを読んだときのメモ。 原題は、inGenious(インジーニアス)。 ティナ・シーリグさんが提唱する、「イノベーションエンジン」の概念を、多くのエピソードと共に学ぶことができる。 以下、目次。 はじめに アイデアは安いのではない……タダなのだ 第1章 革命を起こす - リフレーミングで視点を変えよ 第2章 蜂を招き入れる - 多様なインプットが革新を生む 第3章 積み上げ、積み上げ、積み上げ、ジャンプ!  - アイデアは永遠に止まらない波 第4章 忘れられた顧客カード - 観察力を発揮していますか? 第5章 机の王国 - クリエイティブな空間がクリエイティブな仕事を生む 第6章 ココナッツを思い出す - プレッシャーをアイデアの触媒にする 第7章 猫のエサを動かす - フィードバックはゲーミフィケーションで 第8章 てっぺんのマシュマロ - チームがはまる落とし穴 第9章 早く動く、突き破る - 失敗は正しくやり直すチャンスだ 第10章 魔法の靴を履く人、履かない人 - できると思ったらできる 第11章 内から外、外から内へ 感謝の言葉 これは本書を読みながら考えたのだが、クリエイティビティを磨くために、普段から心がけるべきことを3つ。 1、自分を客観的に観る習慣をつけること 困った時、不便だなと感じた時、「なぜ、困っているんだろう?」「何が、足りないんだろう?」「どうすれば、いいんだろう?」と考える習慣を身に着けることが大事。 問題に直面した時、課題に直面した時は、ついつい視野が狭くなってしまうもの。そんな時、一歩引いて、鷹の目を持って、客観的に、冷静に物事を分析してみることが大事。 2、楽するための手間を惜しまない。めんどくさがらない クリエイティビティ発揮の障害になるのが、「めんどくさい」。 何かうまい方法はないのだろうか?と考えて、常に好奇心を持ち、そして実際に試してみる姿勢が大事。 3、引き出しを増やす 例えば、本を読む場合でも、自分の専門の本ばかり読んでいては、引き出しは増えない。小説でもいいし、サイエンスの本でもいいし、古典でもいい。自分の専門とは全く関係のない本を読んでいる時、課題への答えがふと思いついたりするもの。 また、人付き合いでも、仕事関係の人とばかり付き合っていては、引き出しは増えない。 薄っぺらい人脈()を広げるのではなく、自分も他人に何かを提供して、自分も他人から何かを吸収する関係を築くことが大事。 [amazon_enhanced asin=”4484121107″ /]

「たった1人」を確実に振り向かせると、100万人に届く。

  「たった1人」を確実に振り向かせると、100万人に届く。 (「市場の空席」を見つけるフォーカス・マーケティング)を読んだときのメモ。 ノンカスタマー戦略とは、 他社のノンカスタマーの「不(不満・不安・不便)」をターゲットにする戦略。 コアアイデアとは、 それがなくなると、自社がつぶれる、自分の存在意義がなくなるもの。 近江牛ドットコムのコアアイディア → 肉の魅力を多くの人に知ってもらう 富士フィルムのコアアイディア → きれいにうつす あげないから揚げ → 簡単、台所が汚れない コアアイデアのポイントとは、 ・一言で言える=シンプル ・伝えた相手が何らかの得をする ほめられる、尊敬される、モテる ・聞いた人がつい他人に教えたくなる 「たった一人」とは、「共有された興味・関心」である。それは、人から人へと伝わっていくもの コアアイデアは、狭く、濃く → 中央書店。ボーイズラブ一本に絞ったネット通販書店 ブランドは、「~といえば、~だよね」がスッと言えるもの。 検索エンジンといえばGoogle、コーラといえばコカコーラ、コーヒーといえばスターバックス、等 ブランドに重要なもの。「~らしさ」。スターバックスらしさ。Appleらしさ 会社の中で、マーケットの中で、「~といえば、(自分 or 自分の会社)だよね」をつくること。 [amazon_enhanced asin=”4534050038″ /]

世界一やさしいイラスト図解版!ランチェスターNo.1理論

  世界一やさしいイラスト図解版! ランチェスターNo.1理論を読んだときのメモ。 本書は、所謂「ランチェスターの法則」を、ビジネスの場面に応用した場合の考え方を、イラストを交え、簡易に図解したもの。 簡単に言うと・・ 弱者と強者の戦い方はまったく違う。 差別化とは、「平凡なこと」を、「徹底的にやる」ことである。 これ「しか」やらない、これ「だけ」やり続ける。 あれこれ手を出すよりも、「~一筋」の方が売れる。 「技術基盤一筋」とか、「法人営業一筋」とか。 これだと漠然としすぎているので、さらに、自分が好きなこと、努力しても苦にならないことを掘り下げる。 そして、最終的に「~といえば(自分の名前)」をつくる。 ランチェスターNo.1理論の要点は、 ①差別化 ②一点集中 ③No.1 (ダントツ一位) No.1のなり方。以下の順番で「なりやすい」。 1、あるエリアでNo.1 2、ある顧客層でNo.1。最も重要なお客様は誰ですか?(社内、社外を問わず) 3、ある商品の中でNo.1 →ヒット商品を生み出すのは難しいため、3つのうちの1つだけに、一点集中する。他は捨てる! 1、絞る。一位になれそうな領域に絞る 2、弱い相手と戦う、与しやすい領域で戦う 3、得意なところで勝負する 毎日一時間を一年間コツコツ続け、「~といえば(自分の名前)」をつくる。 [amazon_enhanced asin=”4478020418″ /]

新入社員の内に読んでおきたい、ロジカルシンキングの入門書

  私が所属する会社の新入社員は、新入社員研修でロジカルシンキングの講義を受講する。 ロジカルシンキングの講義では、MECE、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー等の、ロジカルシンキングのベースとなるツールの利用法を学ぶのだが、これらツールは「知識」ではなく「道具」であるため、幼少時に自転車の乗り方を体で覚えるのと同じく、ふらふらしたり倒れたりしながらも、とにかく使い倒すことが上達の秘訣である。 今後、プロジェクトの現場に出て行く新入社員への研修受講後のフォローアップとして、新入社員に推薦するロジカルシンキング関連の書籍を探しており、その時に手に取った一冊が本書である。 [amazon_enhanced asin=”447800613X” /] 私の探していた本は、ピラミッドストラクチャを作成する演習が数多く掲載されており、 「メッセージは何か?(結局何が言いたいのか?)」 「そのメッセージの根拠は何か?(どういうロジックなのか?)」 を、演習を通じ、体で覚えることのできるような本である。 この基準から言うと、本書は基準を満たさない。 本書は、「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)」や「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」等のお硬い系の書籍とは異なり、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーといった用語そのものの説明は、必要最低限に留められている。 本書では、仮想のコミュニティ「赤国」での「ピンキー」なる魚(?)の男の子の学生生活、サッカー留学先である「緑国」での生活、そしてピンキーの住む赤国で発生した、コミュニティ全体の行方を左右する問題の解決を通じ、日々の生活において、いかにロジカルシンキングを応用し、問題解決を行うかが、物語として描かれている。本書の大部分は物語で占められており、ロジックツリーやピラミッドストラクチャの図は一部に挿絵として挿入され、説明がなされるのみである。よって、本を読み、繰り返し演習を行うタイプの本ではない。     しかし、ではこの本の価値がないかというと、全くそんなことはない。新入社員には、ぜひ本書を手にとって読んでみてほしい。 なぜ、新入社員に読んでみてほしいのか? それは、ロジカルシンキングはビジネスシーンだけでなく、日常生活においても有用な道具であることを理解してほしいからだ。 イケてないロジカルシンキングの本では、背景や理由・目的は度外視して、とにかく何かをMECEに分類することに終始していたり、ロジックツリーを作って終わり(「で?(So What?)」の視点が抜けている)ということが多い。 本書は、物語がベースになっているため、ロジックツリーやピラミッドストラクチャを具体的に「どう使うか」が理解しやすい。ロジカルシンキングのツールを、どんな場面で、どう使えばいいのか、そして、それはどんな効果があるのかがわかりやすい構成となっている。 また、物語がビジネスシーンをベースにしていない点もいい。ビジネスシーンを題材にしてしまうと、学生や新入社員にとっては具体的な利用シーンをイメージしにくいものになってしまうからだ。 そして、最もいい点は、本書の主眼が、「ロジカルに物事を考えること」だけでなく、「いかにして自分の意見を持ち、周囲の人々との対話を通じて、真の相互理解を実現するか」に置かれている点だ。 新入社員からは、「ロジックツリーやピラミッドストラクチャーって、どうすれば身につくものなんですか?」という質問を受けることがある。しかし、ロジックツリーやピラミッドストラクチャーは、あいまいさや論理的矛盾を排除し、自身の主張を整理するための道具に過ぎず、本当に大事なことは、この道具をうまく活用し、問題を解決したり、日々の生活を豊かにすることであるはずだ。各章の章末には、「海亀」なる長老による章のまとめが掲載されており、ロジカルシンキングのテクニックを超えて、特に若い世代を対象とした著者からのメッセージが込められている。     本書を読みながら、この内容であれば、工夫すれば小学生や中学生向けのロジカルシンキングの授業でも使えそうだと考えていた。ググってみると、実は著者の渡辺さんは、マッキンゼー退職後にDelta Studioなる会社を立ち上げ、子供から社会人までの幅広い年齢層を対象とした、「問題解決」の技術をレクチャーする教育事業をなさっているらしい。 インターネットの普及とGoogle等のインフラの整備(知の高速道路)により、Web上の無尽とも思える膨大な情報へのアクセスは可能となった。人間には、金持ちにも貧しい者にも、1日86400秒が平等に与えられるが、それをどう活かすかはその人次第。Web上の膨大な情報も、「1日86400秒の時間」と似ている。その膨大な情報を活かし、自らの意見を持ち、日々の生活を豊かにするための重要な習慣の1つが、ロジカルシンキングと言えるだろう。 無論、ロジカルシンキングだけで渡って行けるほど、世の中甘くないが・・・・でも、若い学生に「問題解決」の手法を教えることは、とても有益だと思います。渡辺さんの事業、がんばってください!

村上式シンプル英語勉強法

  Google日本法人社長がかつてDEC社に勤めていた際、実践したという英語勉強法の本。ルミネで全館10%オフをやっていた際、ブックファーストでカゴにぽいぽい放り込んだ内の一冊。私の「iPadで学ぶ英語学習法」の元ネタでもある。 [amazon_enhanced asin=”447800580X” /] 薄い本なので30分~1時間もあれば全部読めてしまうような内容だが、勉強法の納得感は、過去読んだ英語勉強法関連の本の中で最高レベル。「勉強法」と書いたが、内容的には勉強というよりも「筋トレ」に近い。 本書では英語トレーニングの構成を「読む」「単語を覚える」「聴く」「書く」「話す」の5つに区切り、それぞれの項目に対して「コツ」が説明されるのだが、どれもしっくりくる。 一番共感したのは、「流暢な発音」や「ゼロベースで書き上げる英作文」、そして「英熟語の暗記」を切り捨てているところ。要は、英語が読めて聞き取れて、自分のいいたいことをなんとかして相手に伝えることが重要なはずなので、先ずはそこに到達するためにはどうすべきかに集中するのが一番。そのための道しるべを、本書は示してくれている。 しかし、トレーニングの方法は納得できるのだが、どうやってモチベーションを維持するかという問題は、本書を読んだ後も依然として残る。ここが一番重要。 本書の冒頭では、英語のできないビジネスパーソンが多いのは世界でも日本ぐらいで、今のままだと日本は本当にやばい旨の記述があるが、このあたりはビジネス書を読む社会人なら、これまで嫌というぐらい聞かされてきたはなし。それでもやっぱり英語トレーニングに挫折するのは、日々の仕事で英語の必要性をそれほど感じないからなんだろうな。 やっぱり、仕事上英語を使わないとどうしようもない環境に身を置くことが一番なのだろう。外資系でも、社員は日本人ばっかりって会社も多いから、会社選びには注意せないかんけど。 英語を使わないとどうしようもない環境に身を置いたとき、本書のトレーニング方法はきっと役に立つはず。その時って、いつになることやら・・・。