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新入社員の内に読んでおきたい、ロジカルシンキングの入門書

  私が所属する会社の新入社員は、新入社員研修でロジカルシンキングの講義を受講する。 ロジカルシンキングの講義では、MECE、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー等の、ロジカルシンキングのベースとなるツールの利用法を学ぶのだが、これらツールは「知識」ではなく「道具」であるため、幼少時に自転車の乗り方を体で覚えるのと同じく、ふらふらしたり倒れたりしながらも、とにかく使い倒すことが上達の秘訣である。 今後、プロジェクトの現場に出て行く新入社員への研修受講後のフォローアップとして、新入社員に推薦するロジカルシンキング関連の書籍を探しており、その時に手に取った一冊が本書である。 [amazon_enhanced asin=”447800613X” /] 私の探していた本は、ピラミッドストラクチャを作成する演習が数多く掲載されており、 「メッセージは何か?(結局何が言いたいのか?)」 「そのメッセージの根拠は何か?(どういうロジックなのか?)」 を、演習を通じ、体で覚えることのできるような本である。 この基準から言うと、本書は基準を満たさない。 本書は、「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)」や「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」等のお硬い系の書籍とは異なり、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーといった用語そのものの説明は、必要最低限に留められている。 本書では、仮想のコミュニティ「赤国」での「ピンキー」なる魚(?)の男の子の学生生活、サッカー留学先である「緑国」での生活、そしてピンキーの住む赤国で発生した、コミュニティ全体の行方を左右する問題の解決を通じ、日々の生活において、いかにロジカルシンキングを応用し、問題解決を行うかが、物語として描かれている。本書の大部分は物語で占められており、ロジックツリーやピラミッドストラクチャの図は一部に挿絵として挿入され、説明がなされるのみである。よって、本を読み、繰り返し演習を行うタイプの本ではない。     しかし、ではこの本の価値がないかというと、全くそんなことはない。新入社員には、ぜひ本書を手にとって読んでみてほしい。 なぜ、新入社員に読んでみてほしいのか? それは、ロジカルシンキングはビジネスシーンだけでなく、日常生活においても有用な道具であることを理解してほしいからだ。 イケてないロジカルシンキングの本では、背景や理由・目的は度外視して、とにかく何かをMECEに分類することに終始していたり、ロジックツリーを作って終わり(「で?(So What?)」の視点が抜けている)ということが多い。 本書は、物語がベースになっているため、ロジックツリーやピラミッドストラクチャを具体的に「どう使うか」が理解しやすい。ロジカルシンキングのツールを、どんな場面で、どう使えばいいのか、そして、それはどんな効果があるのかがわかりやすい構成となっている。 また、物語がビジネスシーンをベースにしていない点もいい。ビジネスシーンを題材にしてしまうと、学生や新入社員にとっては具体的な利用シーンをイメージしにくいものになってしまうからだ。 そして、最もいい点は、本書の主眼が、「ロジカルに物事を考えること」だけでなく、「いかにして自分の意見を持ち、周囲の人々との対話を通じて、真の相互理解を実現するか」に置かれている点だ。 新入社員からは、「ロジックツリーやピラミッドストラクチャーって、どうすれば身につくものなんですか?」という質問を受けることがある。しかし、ロジックツリーやピラミッドストラクチャーは、あいまいさや論理的矛盾を排除し、自身の主張を整理するための道具に過ぎず、本当に大事なことは、この道具をうまく活用し、問題を解決したり、日々の生活を豊かにすることであるはずだ。各章の章末には、「海亀」なる長老による章のまとめが掲載されており、ロジカルシンキングのテクニックを超えて、特に若い世代を対象とした著者からのメッセージが込められている。     本書を読みながら、この内容であれば、工夫すれば小学生や中学生向けのロジカルシンキングの授業でも使えそうだと考えていた。ググってみると、実は著者の渡辺さんは、マッキンゼー退職後にDelta Studioなる会社を立ち上げ、子供から社会人までの幅広い年齢層を対象とした、「問題解決」の技術をレクチャーする教育事業をなさっているらしい。 インターネットの普及とGoogle等のインフラの整備(知の高速道路)により、Web上の無尽とも思える膨大な情報へのアクセスは可能となった。人間には、金持ちにも貧しい者にも、1日86400秒が平等に与えられるが、それをどう活かすかはその人次第。Web上の膨大な情報も、「1日86400秒の時間」と似ている。その膨大な情報を活かし、自らの意見を持ち、日々の生活を豊かにするための重要な習慣の1つが、ロジカルシンキングと言えるだろう。 無論、ロジカルシンキングだけで渡って行けるほど、世の中甘くないが・・・・でも、若い学生に「問題解決」の手法を教えることは、とても有益だと思います。渡辺さんの事業、がんばってください!

ケース面接の問題

  中島聡さんのblogに「頭の柔軟体操」というカテゴリがある。 所謂、外資系戦略コンサル、投資銀行等の面接で利用される、ケース面接のたぐいである。 問題を読んでいると、電車の社内で、中吊りを眺めているだけで結構いろいろ考えられることに気づく。満員電車の中で、混雑がひどくて本すら読めないタイミングがしばしばあるが、あれは、考えようによっては、普段考えないようなことを考えるチャンスと言える。   ケース面接の問題は、以下のサイトにて、過去に実際のケース面接で使われた問題を参照することができる。 http://www.gaishi-seminar.net/book/caseStudyExample.html ボストンコンサルティンググループ 面接出題事例 「オリンピックのメダル数を上げるには?」 「日本のノーベル賞受賞者の数を上げるには?」 「スキー場の来場者を増やすには?」 「地方都市を復興させるには?」 「とある歯医者の売り上げを二倍にするには?」 「オートバイの売り上げを上げるには?」 「渋谷の町を大人の町にするには?」 「ラクロスの競技人口を二倍にするには?」 「京都の観光収入を上げるには」 「日本の子供の学力は二十年前と比べてどうなっているか」 ブーズアンドカンパニー 面接出題事例 「セイコーが時計の売り上げを伸ばすには?」 「NHK教育番組は必要かどうか?」 「あなたの成功体験を三つあげてください。それをもってあなたの自己紹介とさせていただきます」 アクセンチュア 面接出題事例 「ユニクロに勝つ戦略を考えよ」 「国内旅行者を増やすにはどうしたらよいか」 「野球の球団を黒字にするには?」 「地方の国立大学の生き残り戦略は?」 「バナナの売り上げを二倍にするには?」 マッキンゼー 面接出題事例 「ゴルフクラブの売り上げを伸ばすには?」 「日本の米をヨーロッパで売るには?」 モニターグループ 面接出題事例 「シャンプーの市場規模は?」 アーサーディーリトル 面接出題事例 「国立大学の民営化の是非」 ドリームインキュベーター 面接出題事例 「ボーダーフォンの売り上げを伸ばすにはどうしたらいいか?」 「サッカースタジアムへの入りを二倍に伸ばすにはどうしたらいいか?」 「晩婚化はいいか悪いか」 「18歳未満未成年に自動販売機でたばこを買わせないようにするには?」 「通勤ラッシュの緩和策は?」 「新幹線の中のコーヒーの売り上げは?それを二倍にするには?」 ATカーニー 面接出題事例 「日本での一年間の時計の売上は?」 「文武両道の人間を一週間以内に100名集めるには?」 「うちわの売上を伸ばすには?」 「表と裏のコイン、表と表のコインからどちらかを選んだ際に、裏が出る確率は?」 ゴールドマンサックス 面接出題事例 「日本の電柱の数は?」 「成功の定義は?」 「仕事とは何か?」 「権力を持つことの是非は?」 「CEOになるならどこの会社がいい?」 「国に投資するならどこ?」 「日本のシャンプーの売り上げを二倍に」.

村上式シンプル英語勉強法

  Google日本法人社長がかつてDEC社に勤めていた際、実践したという英語勉強法の本。ルミネで全館10%オフをやっていた際、ブックファーストでカゴにぽいぽい放り込んだ内の一冊。私の「iPadで学ぶ英語学習法」の元ネタでもある。 [amazon_enhanced asin=”447800580X” /] 薄い本なので30分~1時間もあれば全部読めてしまうような内容だが、勉強法の納得感は、過去読んだ英語勉強法関連の本の中で最高レベル。「勉強法」と書いたが、内容的には勉強というよりも「筋トレ」に近い。 本書では英語トレーニングの構成を「読む」「単語を覚える」「聴く」「書く」「話す」の5つに区切り、それぞれの項目に対して「コツ」が説明されるのだが、どれもしっくりくる。 一番共感したのは、「流暢な発音」や「ゼロベースで書き上げる英作文」、そして「英熟語の暗記」を切り捨てているところ。要は、英語が読めて聞き取れて、自分のいいたいことをなんとかして相手に伝えることが重要なはずなので、先ずはそこに到達するためにはどうすべきかに集中するのが一番。そのための道しるべを、本書は示してくれている。 しかし、トレーニングの方法は納得できるのだが、どうやってモチベーションを維持するかという問題は、本書を読んだ後も依然として残る。ここが一番重要。 本書の冒頭では、英語のできないビジネスパーソンが多いのは世界でも日本ぐらいで、今のままだと日本は本当にやばい旨の記述があるが、このあたりはビジネス書を読む社会人なら、これまで嫌というぐらい聞かされてきたはなし。それでもやっぱり英語トレーニングに挫折するのは、日々の仕事で英語の必要性をそれほど感じないからなんだろうな。 やっぱり、仕事上英語を使わないとどうしようもない環境に身を置くことが一番なのだろう。外資系でも、社員は日本人ばっかりって会社も多いから、会社選びには注意せないかんけど。 英語を使わないとどうしようもない環境に身を置いたとき、本書のトレーニング方法はきっと役に立つはず。その時って、いつになることやら・・・。